GNU Social の思い出

この記事は 分散SNSフォーラム - connpass 応援記事です


タイトルは若干誇張であってここではGNU SocialインスタンスのひとつであるFreezePeachにアカウントを開設してからの半年間にあったことを私的な観点から記録します。GNU SocialというのはMastodonより古いいわゆる分散SNSの実装のひとつで、Mastodon等の別の分散SNS実装と一定の互換性があり相互通信が可能です。今回取り扱うFreezePeachは、ほぼ唯一日本人コミュニティが存在しているGNU Socialインスタンスです。*1

FreezePeach と #twexit

私がFreezePeachにアカウントを作成したのは日本でMastodonが話題になるよりかなり前になる2017年1月2日で、ことの発端は女性器に擬態している生物 (現@hakabahitoyo) が思いつきで始めた #twexit という脱Twitter運動でした。本人曰くTwitterの代替としてFreezePeachを選んだことに必然的な理由はなかったそうですが、ともかくこれに影響された何人かのTwitterアカウントがFreezePeachにアカウントを開設しました。といっても多くの人にとってTwitterから脱却する強烈な理由があったというよりは、退屈しのぎにアカウントを作ったらだんだんとムーブメントとして盛り上がってきたこと、それに原住民との交流が活発だったことの目新しさなどから興味を惹かれたという感じだったでしょうか。

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https://freezepeach.xyz/

アメリカに存在するインスタンス、FreezePeachはその名 (Free-Speech) のとおり「言論の自由」を大々的に掲げたインスタンスのひとつです。その利用規約はシンプルを極め、児童ポルノ投稿はBAN対象であること、それ以外の言論については自己責任、と念押しされているのみです。

As for rules:

1. Don't post child porn. This is a bannable offense. And we're obligated by law to report you to the appropriate branch of law enforcement.

That's... that's pretty much it. Mind the laws in your own country on what you can get in trouble for discussing, but that responsibility is solely your own.
(FreezePeach ToS より引用)

Twitterにはルールがたくさん定められています。著作権侵害、露骨に性的なコンテンツ、嫌がらせ、非合法な目的での利用……。Twitter社のこのルールの運用が非常に悪名高いことはみなさんもよくご存知だと思われますが、とにかくFreezePeachではできるだけBANの無いサービスを目指す代わりに、ブロックや「sandboxing (いわゆるミュート)」の積極的な利用を推奨し、「嫌なら見るな」というある意味で非常にハッカー精神的なサービス運営方針をとっています。

#twexit 以前のFreezePeachは、元々はGamer Gateという一大論争を発端に、いわゆる Social Justice Warrior (日本のTwitterでいうツイレディやポリコレ棒) から逃れて話ができる場として作られたようです*2。やがて小規模なコミュニティを形成するに至った住民は日常の些細な出来事やニュースや趣味について語るといった至ってTwitterと同じような場としてFreezePeachを利用してきました。アカウント同士の距離感がかなり近いので頻繁にリプライがとび交い、実際Twitterの常識で使っているとクソリプそのものとしか言いようがないユーザー体験を強いられることになるのですが、このあたりの感覚はインスタンスの仕様や規約といったハード面とは別に形成されるもので興味深いです。#twexit 以前に一度日本のTwitter文化圏のユーザーが入植し日本人街を形成されていたことにはいたらしいのですが、その後文化が定着せずに消滅し、Twitterの投稿をFreezePeachにミラーする仕組みを使っている人による自動投稿が延々とタイムラインに流される廃墟と化していたところに女性器に擬態している植物が目をつけたという経緯のようです。

ともあれ #twexit から数日の間、各人思い思いに好きなことを書き込み続け、public timeline (インスタンス内の投稿が全て流れるタイムライン) はマルチバイト文字で圧倒されていきました。

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(1月3日3:02時点でのトレンドの様子。GNU Socialのハッシュタグは日本語が全部アルファベットになる*3のですが、よく見ると全部日本のTwitterの文脈)

そうこうしているうちに案の定というか、女児の画像を投稿したアカウントが通報を受けて凍結されます。この直後サイトトップに常に「子供のエッチな画像投稿禁止」旨の警告文が表示されるようになり体感治安がメチャ悪化しました。

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この削除要因が裸の女児が泥だらけになって遊んでいる姿態(局部の露出なし)の画像や水着で海で遊んでいるただのホームビデオのリンクというTwitterならスルーされる程度の内容だったせいでTwitterより不自由じゃないかと多少物議を醸したのですが、結局あえてルールに抵抗する理由もなくそれ以降はごくマイルドな画像・動画がシェアされる良好な状態が維持されて警告文の表示も無くなりました。そういえばPawooでも無修正3次(某有名ゲイビデオ)が流れたと風の噂に聞きましたがどうなったんでしょうか。

こうして振り返ると一連の騒動がFreezePeachとしては迷惑としか言いようがないものだったことに愕然とさせられるのですが、実際タイムラインを汚すなと言う人も何人かいた一方歓迎する人もいて、全体として排他性を感じることはなかったと思います。あまりに良い人達なので最初は新しい遊び場くらいにしか思っていなかった私もだんだん愛着が沸いてきました。ともかくルールを守る限りでは書く内容についてはあくまで不可侵という認識は全員に共有されているようで文章の内容に関して不快な攻撃を受けることはほとんどありませんでした。だからといって英語で女児による前立腺マッサージについて英語で記述すると「ここではあなたにはその投稿をする自由がある」というリプライが飛んでくるのはかなり嫌な体験でしたが。

MastodonGNU Social

MastodonGNU Social文化の関係についても触れておきます。いま一度念を押しますが、この記事で触れるGNU Social文化とはFreezePeach, Sealion Club, Shitposter Club, GNU/Smug 等の互いに関連しあったGNU Socialインスタンスが構成する一定の文化圏を指し、必ずしも全てのGNU Socialインスタンスに当てはまるかどうかについては私の知るに及ぶところではないことをお断りしておきます (例えばリチャード・ストールマンのいるGNUsocial.noにはあてはまらないと思う)。

さて単刀直入に言うと、FreezePeachはmastodon.social (mastodon開発者の運営するインスタンスです) にインスタンスごとブロックされています。いろいろと経緯*4はあるようなのですが、不謹慎ユダヤネタにマジレスした人が晒されてHentai画像が大量に送りつけられるという事件があり、関連した治安の悪い文化圏のインスタンスがまとめて目をつけられたというどこかで見たような事情のようです。

今更になりますが、FreezePeachやその周辺のインスタンスのユーザーはしばしば自分たちの居場所をゲットーと呼ぶなど悪質な言動を文化にしているところがあります。Mastodonとしてはそのような文化を快く思わず、一方のGNU Social側もMastodonを気に食わないやつだと思っているようです。

The GNUsocial Axis Resolutions (日本語) ではかなりはっきりとMastodonに対する反感が表明されていますが、MastodonTwitterという一企業の支配からの脱却による自由という面を重視している一方で言論に関してはキレイで有意義な場を作ることを指向しています。Mastodon.socialのことは詳しく知らないのですが、capitalismとかfascismとかの単語がけっこう飛び交っている印象があります。

GNU Social側は元々治安が悪いうえにMastodonを目の敵にしていてPawooが可愛いくらいにやりたい放題やっています。shitposter.clubという不謹慎インスタンスMastodon開発者の偽アカウントが存在するのですが、Pawoo鎖国騒動に乗じて暴言を吐いていた当時にはなりすましに気づかず困惑していた日本のユーザーがかなりいた覚えがあります。

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この件ではmastdn.jpのnullkalが既存の推奨ブロックリストに追従する形でshitposter.clubを安易にブロックしようとしたのをGNU Social側の説得により撤回するという一幕もありました*5。shitposter.clubはそもそもユーザー全員のアイコンがEugenに変わったりかなりムチャクチャをやっているのですが、他にもsealion.clubでは"Mastodon"と書くと"the pile of Ruby shit"に置き換わるなどいろいろあるようです。ひどい。

まとめ; 分散SNSのこれからについて

さて、日本のTwitterMastodonが流行った一時の熱も収まり、各地で、Twitterとは少し違う居場所としてコミュニティが形成されているのではないでしょうか。

これは一例です

例に漏れずFreezePeachもそんな具合で、LGBTPZN関連の話題、あるいは分散ネットワークについての技術的な話題、その他の話題についてもぼちぼち話す場所になっています。また、TwitterのURLを引用しても相手に通知が行かないために気兼ねなく特定のツイートに言及できるのは非常に便利でした。私の場合、FreezePeachのアカウントのフォロワーはTwitterのフォロワーの部分集合なのであえて拡散力の低いほうを使う理由はないはずなのですが、前述した特定の話題を扱うときはもちろんのこと鍵垢にするほどでもないツイートを書き込むときにも使えると思っています。おそらくTwitterからはみ出して他の非主流SNSにまたがったユーザー全般がそう感じるのではないかと思うのですが、なんとなく、独特の内輪の雰囲気があります。ただ、雰囲気でクローズドとはいえ実際にはパブリックなので、いつか痛い目を見るかもしれません。特にMastodonが普及してからは連合タイムライン経由で投稿が漏れるのであまり意味がなくなったかも。たまにペドフィリア云々という投稿で知らないマストドンアカウントから通知が来ることがありヒヤッとさせられます。

FreezePeachを使っていてひとつ心残りだったのは、結局以前からのユーザーとの間には壁が存在したことです。初期こそこちらの日本語投稿をGoogle翻訳を駆使してリプライを送ってくるということが頻繁にあったけど、徐々に無くなっていったのは勿体無く思います。まあLGBTPZNという概念や「ラジ」という語尾の輸出という一定の成果はありました。

FreezePeachの大きなテーマだった言論の自由についても書いておきます。理論的には、各自が自身の責任の下で情報を発信するインフラを所有することが無制限な言論の自由を産むはずです。旧来のメディアに対してインターネットはそうした可能性を秘めています。幸いにして言論の自由が保証されている国に住み、一定の意味において確立した自由なソフトウェア流通を享受している私たちは、その限りにおいてどんな情報でも発信できるはずです。しかし拡散力という面では一からの発信は困難を極めるためにSNS等の確立されたインフラに乗る必要がありますし、たとえ自由なソフトウェアによってその問題から解放されたとしてもソフトやハードを自前で整えるほどの技術力が誰にでも備わるということは考えにくく、ましてや定期的なアップデートや悪意のある攻撃への対応になると適応できる人はかなり限られてくるでしょう。

そもそも私達は本来、自由なはずです。ところがTwitterを利用すればTwitterという企業の気紛れに、実生活では家族や学校や会社や自治体や国に左右されてしまいます。これは「権利を得たいなら義務に従え」式の疑似規則ではなく、いわば交渉の領域に存在する問題です。私たちは常に他者を利用し、同時に利用されて生活しています。ただ、何を利用するかどうかは選ぶことができるし、他者を変えることもまた可能な選択肢のひとつです。

インターネットの言論は、それが多数の人間に関わる、つまり政治的な事柄である以上ひとつの完璧な正解といったものはありません。#twexit を機にFreezePeachにアカウントを作った人たちは現在FreezePeach以外の場所を求めていくつかの自前のGNU Socialインスタンスを運営しています。

Pawooへの移行運動のとき、私は少なくとも自由さにおいて上回るはずのFreezePeachが以前からあったことを差し置いてPawooが救世主のように語られる様子を歯がゆく感じながら見ていました。FreezePeachは二次絵でBANしないだけTwitterよりも確実に良いです。無修正でもOKなだけPawooよりもさらに良いです (もちろん猥褻物頒布にはあたるわけですけど、もし確信犯的にそうしたいという意図がある場合に力になる場はたくさんあるし、なんならTorだってあるということはとても意味のあることでしょう)。結局PawooとTwitter二重投稿する文化ができつつあるのはとても良いことでした。TwitterにもPawooにもFreezePeachにもそれぞれ利点と欠点がありますが、その存在を知らなかったりそもそも存在しなければ使うことすらできないでしょう。私たちは選ぶことも変えることもできます。もしあなたが何か不満を持っているなら、それを少しだけマシにする方法は案外手を伸ばせば届くものかもしれません。

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日本マストドン史が今後編まれると思うけど、この記事を機に先史としてGNU Socialをねじ込む風潮を作っていきたい。これを読んでいるマストドン史編纂者は事前にFreezePeach住民に一声かけること。

*1:分散SNSなんだからインスタンスに存在するコミュニティに意味はないという意見はある意味正しいけど、現実的には同じインスタンスであるということにはかなりの意味がある。インスタンス内の投稿をまとめて閲覧できるTLが存在すること、そして自分がどのインスタンスにアカウントを作成するかという決め手になる要因は結局そのインスタンスの文化や既存アカウント群にしかないため

*2: これは正確には sealion.club というインスタンスの話で、FreezePeachはその派生インスタンスらしい

*3:ラテン文字ICU音訳器でむりやりラテン文字に正規化 (transliterator_transliterate) するクソアホ仕様である

*4:https://freezepeach.xyz/notice/2080604

*5:でも分散SNSにおいて悪質インスタンスぐるみでニセアカウントを作られた場合、インスタンスをブロックするか泣き寝入りするか法的手段をとるかの三択しかなさそうなのでEugenがかわいそうに思えてきた

Encouragement of Pedophile Pride

You may be surprised to learn that there has been a remarkable number of pedophile organizations in serveral countries. List of pedophile and pederast advocacy organizations - Wikipedia

I regret this list does not include Japanese one, although Japanese society is so closely related to problems with pedophilia as the other countries in the list. It is commonly said that pedophilia is much more common in Japan since law in Japan was uneager to ban child pornography for a long while. However, the recent pedophile social theories attribute the apparent generosity with pedophilia to lolisocial (lolicon-social, the lolicon version of homosocial, characterized by the patriachal attitude toward female youthfulness, and pedophilophobia) to find out it is a hidden menace to pedophiles.

So I would like to take initiative to promote the P-Pride (Pedophile Pride) movement from Japan, proposing the P-Pride flag.
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The sequence of colors in this flag derives from Ichigo Mashimaro (苺ましまろ), a Japanese manga by Barasi (ばらスィー), who is the most meritorious pedophile in Japan. The serialization of Ichigo Mashimaro began in 2002 and has already published seven volumes so far. Each volume has a unique color in the Ichigo Mashimaro title logo, like volume 1 red, volume 2 azure and so on. I arranged these seven colors in publication order and designed "P-Rainbow". This flag is licensed under CC0 and you are completely free to use this flag for your actions any day now. I sincerely hope 2017 will be a year of P-Pride.

苺ましまろ 1 (電撃コミックス)

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柚子森さん 1 (ビッグコミックススペシャル)

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This article participates in LGBTPZN Advent Calendar 2016 - Adventar. Write, Act and Please Join Us! We are Rainbow Brothers!

LGBTPZNの現在地

LGBTPZNは、かつては、7種類の多様な性――レズビアン、ゲイ、バイセクシャルトランスジェンダーペドフィリア、ズーフィリア、ネクロフィリア――のアクロニムでした。現在は、LGBTPZNはアクロニムではなく、多様な性を象徴するシンボルであると考えられています。

http://LGBTPZN.org/

LGBTPZNという概念/運動が、主に日本のTwitterを中心に普及をはじめてからおおよそ2ヶ月がたつ。
非常に短い期間ながら、ペドフィリア、ズーフィリア、ネクロフィリアレズビアン、ゲイ、バイセクシャルトランスジェンダーアセクシャルパンセクシャルフェミニスト、等々さまざまなバックグラウンドをもつ人々の間を飛び交い、賛同、嫌悪、疑念、議論、誤解を巻き起こしてきた。
とくにこの数日間、LGBTPZNの議論は第二の波とも言うべき大規模な拡大をみせ、ごく小規模なコミュニティで形成されてきた運動が急速に変容しつつある。その中であらためて、LGBTPZNとはなにかという問いが必要とされているように思う。

LGBTにPZNを付加したLGBTPZNという語の本当の意味での起源はあまり定かではなく、日本のウェブ上に登場する以前にも、ポーランド語や英語のウェブサイトにおいて使用されたケースがいくつか確認されている。いずれにおいてもごく断片的な痕跡しか残っていないが、LGBTを茶化したその場限りの冗談として使われている様子で、とりわけポーランドにおいては過激で保守的なクリスチャンによる反LGBTの文脈で、LGBTをおとしめるための単純な罵倒語として用いられていた。

日本におけるLGBTPZNは、インターネットにおいてしばしば喧々たる議論を招く過剰なペドフィリア嫌悪問題圏の中で、ひとまずは形成されていった。それ以前にもごく小数の人間が散発的に使用していた言葉ではあったが、9月下旬に「ロリコンは存在だけで犯罪なのか?」という議論が大きな話題を呼んだこともあり、小児性愛者やポリティカルコレクトネスに関心の高い層の間で一躍「新しい概念」として話題にのぼるようになっていった。
その後、キャッチーな概念であることからTwitterでの拡散戦略は功を奏し、セクシャリティや人権運動に関心の低い層にもしだいに認知されるようになった。現在ではPに留まらずZやN、LGBTの当事者さえもTwitter上で運動に加わっている。

本論は、この2ヶ月間にLGBTPZNをとりまいて発生した言説を分析し、LGBTPZNの現在地を探ることを目的とする。運動以前の基本的な事項、PZNそれ自体は犯罪ではなく尊重されるべきであるということについては、nexa氏の記事が参考になるので、そちらを参照していただきたい。
屍姦生活に必要なモノ ネクロフィリアと性的多様性と人権について

LGBTPZNはどのようにとらえられてきたのか?

LGBTPZNが周知されていく過程で、支持派であれ反対派であれ、その受容形態は面白いほど多様だった。まずは、そのそれぞれを分析することから始めよう。

キリがない

LGBTPZNへの反応の中で当初から多かったのは、LGBTにPZNをつけくわえたことで本質的な問題は消えていない、つけ加えではキリがないという指摘だった。たとえばアセクシャルパンセクシャルをはじめ、LGBTの規範から漏れた存在、無視されてきた性的マイノリティを掬い取るべきだという指摘は、従来のマイノリティ運動の中でも盛んに行われてきた。その知見のもと、あえてLGBTにPZNを加えただけの概念に何の意味があるのかという疑問が生じる。

LGBTでは捉えきれないものがあるというアイディアには、たとえば90年代に形成されたクィア理論があり、LGBTという固定的なジェンダーカテゴリーに留まらずあらゆるセクシャリティを扱うという点で、LGBTPZNを包括するものに思える。異論はあるものの、確かにクィアはPZNをもその射程に入れるものであり、理論・運動としてもLGBTPZNよりずっと歴史があり、精緻だ。
しかし、LGBTPZNが問いかけるものは、クィアによって完全に置き換えられるだろうか。そのとき損われるものは、ペド、ズー、ネクロという、特に反社会的、変態的、異常性癖とされるセクシャリティを、あえてLGBTと結合することの意味である。

LGBTPZN運動が形成されていく過程で頻出した「悪意」という言葉。少なくとも歴史的にLGBTPZNを語るうえで、この言葉を欠かすことはできない。しかしこの「悪意」は決して、害を為すことや、否定的なニュアンスと安易に結びつけられてはならない。クィアの起源が「変態」という語を肯定的に捉えなおすことであったこと、そしてその運動がファッションとして消費され本来の理念が失われていく危機感と常に隣り合わせであったことは、LGBTPZNの「悪意」を読みとくうえで示唆的である。LGBTPZNという七文字の連なりが与える、感触としての「破壊力」。これはLGBTPZNにとって副次的なものとして位置づけられない。むしろ、それを駆動するエネルギーであると同時に、この感触はむきだしになった倫理の感触であり、LGBTPZNでなければ問うことのできない固有の問題の根幹にかかわるものである。

LGBTPZNはクィアに単純に包括される概念でもなければ、対立するものでもない。ただ、その七文字の連なりが問う固有の問題とともにあるのである。LGBTPZNが扱う固有の問題とは何か?このことは、LGBTPZNへの反応を総覧したあと、改めて考察する。

PZNの権利向上

基本的には、LGBTPZNはペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリアの権利を向上させるための政治運動として理解されることが多い。

地位の獲得を目論むPZN当事者たちによる権利運動とされることも、またPZN当事者からは「良心的な」人間が無責任に考えた大きなお世話として敬遠されることもあった。日頃から児童に対する性犯罪を問題視している活動家からは、犯罪者がLGBTの立場に居座ることでその加害性を隠蔽しようとする活動だと捉えられ、激しい非難を受けることもあった。

LGBTPZNの主意がペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリアの権利の向上であるというのは、上掲のLGBTPZN.orgでそのような理念が謳われているとおり、事実である。だがここでも、前述の「悪意」がごっそりと抜け落ちている。

LGBTPZNの「悪意」は、そのような「権利向上」運動というカテゴリのいずれをもすり抜ける。LGBTPZNは、PZNはLGBTと同じだから仲間に入れるべきだという単純な思いつきに基づく運動ではない。むしろ、われわれの議論の場を「悪意」によって問いなおすことである。これも、既に言及した「LGBTPZNが扱う固有の問題」に関わってくるので、詳しくは後に検討する。

悪質な釣り

LGBTPZNがしだいに人口に膾炙していったころ、LGBTPZNの主張内容に賛同する人々に対し、LGBTPZNは実体のない運動、悪質な釣りであるから真に受けてはいけないと啓蒙する活動がみられるようになった。
ここには「悪意」について上の二者とは裏返しの誤解があるように思える。
まず、LGBTPZN.org はLGBT団体サイトのパロディだし、LGBTPZNがクィアのようにジェンダースタディーや運動の中から生じてきたものではないことは確かである。
また悪質性についても、既存のLGBTにあえて異様なものをぶつけ、混乱させることは、すでにLGBTの運動に関わる人の立場からすれば茶化されているようにしか思えないだろう。

だがしかし、いま一度足を地に降ろし、周りを見渡してほしい。
LGBTPZNは反社会的なセクシャリティ自体が犯罪であるかという逼迫した問題とともに歩んできた。LGBTPZNは「悪意」に満ちており、少くとも表面上は偽物の運動であるが、しかしだからこそ意味を持ってきた。なにより、現実に存在するマイノリティへの差別に目を向けることを、LGBTPZNは強く迫る。
「悪質な釣り」として、現実に存在する問題とともにこれを一蹴することは、ひどく偏狭な態度に思える。語る内容がどのようであるか以前に、何のために語るのかを見失うべきではないはずだ。

本物の中立性

LGBTは一部の性癖だけを特権階級化する差別的な運動であり、LGBTPZNの方が政治的に中立性の高い適切な概念であるとして、LGBTPZNをLGBTの欺瞞を暴く概念だと捉えるもの。
この論は、「LGBTはひっこんでろ」という主張とともに、某大手ツイッターユーザーによって拡散され、「第二の波」における最も大きな出来事として位置付けられている。*1

「配慮」する対象がLGBTは不十分であると、LGBTPZNは主張する。だが、歴史を紐解けば明らかであるように、LGBTは放置されていた差別構造を明らかにし、差別と戦い、その都度内外から発生するさまざまな問題と向き合い、マイノリティを救ってきた。LGBTPZNはこのことに多大な敬意を払うし、だからこそLGBTPZNを名乗る。一面的な基準で両者を比較して劣っているものをすべて否定すること。現実に存在する問題どころか、LGBTの歴史にすら目を向けようとしないこの態度は、明らかに差別を解消する方向ではなく、差別を生み出す方向に動くものである。それはむしろ、ポーランド人の用法、LGBTをおとしめるためにPZNを同列に扱うことと、何ら変わりはない。
LGBTPZNへの一面的な理解を糾弾するLGBTPZNは、LGBTへの一面的な理解も糾弾する。

いったい、LGBTPZNをどのようにとらえればよいのだろうか?

ここまで総覧してきたLGBTPZNへの理解は、いずれもある意味では正しいが、ある意味では不適切だった。一体何が悪かったのだろうか?

既存のカテゴリのいずれかに放り込むことによってLGBTPZNを規定すること――「まともな」権利運動だったり、無責任な与太だったり、釣りだったり、LGBTへの攻撃だったり――では、LGBTPZNが本当に問うものから目が逸れてしまう。LGBTの四文字にPZNの三文字を結合するということ自体が発する問い、それらの総体こそがLGBTPZNである。
LGBTにペド、ズー、ネクロの3つ――これらはとくに創作において比較的馴染深いモチーフでありながら、現実に存在するその当事者は差別を受け、それどころか実在し、性的な悩みを抱えているということすらも認識されていない傾向にある――を結合するとき、何が起きているのか?

LGBTPZNの「悪意」は、撹乱する悪意である。LGBTPZNは正常/異常を規定してきた倫理、常識、社会通念を、露悪的に撹乱する。ここにおいて、ペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリアの「反社会」性、「異常」性は、社会が構築した人権意識とセクシュアリティの規範を内部から破壊するラディカルな問いへと変貌する。

ほかでもないLGBTPZNの七文字が問題になることの必然性、LGBTPZNの固有性がここにある。

性的な表現に寛容な場であるはずのネット文化やオタク文化においてさえ、その主流において「ガチ」の小児性愛、動物性愛、屍体性愛は、「変態」「異常」のレッテルのもと、無邪気な差別的扱いを受けていた。むしろ、既存のLGBTでさえも十分に理解されているとはとてもいいがたいことは、誰の目にも明らかであるはずだ。LGBTPZNはそのような議論の「場」そのものを、撹乱し、見直しを迫るものである。

LGBTPZNの運動は、悪意と不可分である。だが悪意を否定的ニュアンスだけで考える必要はないだろう。われわれの日常の感覚、インターネットを使用する感覚では、悪意をもって議論に加わること、場を乱すこと、炎上を起こすことはやってはならないことだった。しかしこの感覚は、「正常な」倫理、常識、社会通念の巧妙な策略でもある。われわれの日常の倫理を飛び超えるとき、硬直した規範を問い直すとき、正常さは、それを「悪意」と名付け、そんなことをすれば炎上するぞと脅しをかけるのである。
今日のインターネットにおいて、異常なもの、規範を侵すものは、たいていの場合、何らかの炎上の状態を避けられないものである。だからこそわれわれにやれることは、いかにうまく悪意を浸透させるかということ、いかにうまく場を撹乱するかということである。

われわれは、LGBTPZNパレードの夢を見る。
小児性愛者・動物性愛者・屍体性愛者、その他諸々のセクシャリティをもった人々が、七色の旗 (否、もっとたくさんの色かもしれない) のもと、連帯し、思い思いのスタイルで、それぞれのセクシュアリティに誇りを持って街を占拠する光景を。

そのとき、LGBTPZNの悪意は、とうにその意味を失っているのだ。


この記事は LGBTPZN Advent Calendar 2016 - Adventar の三日目です。

あなたも運動に加わってみませんか。LGBTPZN運動はまだまだ生まれたばかりで、常に消散のおそれと隣り合わせです。あなたがLGBTPZNについて考えること、語ることこそ、LGBTPZNの力になります。LGBTBTPZNについて、家族や友人と議論をしてみる、ブログに記事を書く、またはTwitterアカウントを作成して、#LGBTPZNおよび #LGBTPZNさんと繋がりたいでのディスカッションに参加してください。

*1:この「事件」については 砂鉄はどのようなアカウントか – 墓場一夜 が参考になる。