今からでも間に合う!「ヤマノススメ」のススメ
まずはこれを見てほしい。
少しでもかわいい!と思ったなら、今すぐヤマノススメを見るべきだ。ヤマノススメは、きっとあなたに更なる「かわいい」をもたらしてくれるから。
ヤマノススメを見よう
2013年の第一期放送から2014年のセカンドシーズン、そこから長いブランクを経て2017年にはOVAの劇場公開、そして今年の7月からファン待望のサードシーズンが放送される予定のアニメ「ヤマノススメ」。
セカンドシーズンに衝撃を受けて以来5年間にわたってヤマノススメに執着し続けてきた筆者だが、ヤマノススメに触れないままサードシーズン放送をやり過ごしてしまう人々が存在する事実に居ても立ってもいられずこの記事を記す。
(7/22 追記: もともとサードシーズンにあわせてこれまでの無料配信を見ることを勧めることが主旨の記事でしたが、サードシーズンが無事放送開始し、無料配信が終了したので、単にヤマノススメを紹介するだけの意図のもと内容を書き換えました。)
ヤマノススメのここが面白い
埼玉県飯能市を舞台に「登山」をテーマにした「ゆるふわ登山アニメ」と紹介されがちなヤマノススメだが、むしろヤマノススメを特別なものにしている特徴として、映像としての質の高さを挙げたい。アニメーターのクセを活かした良質な作画、美麗な背景、キャラを立ててメリハリの効いた脚本、優れたBGMや主題歌たちなど、どれをとっても尺の短さゆえかテレビアニメシリーズとしては稀に見る密度の高い映像になっている。
ヤマノススメは、作画監督の松尾祐輔を筆頭に優れたかわいいキャラクターを描くアニメーターを各話原画に配置し、さらにシリーズ通しての画風の統一よりも各話ごとのクセを残すことで、独特の魅力を作り出している。設定上は15歳の女子高生ながらどう見ても小学4年生にしか見えなくなることもしばしばあり*1*2、かと思いきやシュッとした線の細い美少女風になることもある、その面白さが私は大好きだ。
デイリー雪村 pic.twitter.com/j8FTae0Zbi
— モチ心(こころ) (@omochitecture) 2017年1月29日
ヤマノススメのここも面白い
インドア趣味で内気な性格の雪村あおいと、活発で友達思いな倉上ひなたのコンビの日常を眺めるのも本作の醍醐味の一つ。
……というのは何も間違っていない情報なのだが、いわゆる「人物紹介」では言い表せない部分のキャラクター性の厚みもヤマノススメの特徴で、公式に紹介されているプロフィールからは伺えない真の性格のようなものが、見進めていくうちにどうも見えてきてしまうのだ。そもそも内気な主人公というのは世に数多存在しても、やがてかけがえのない友達になる人物に対して「誰だっけコイツ」「もしかしてめんどくさい人?」「軽い人だな…」など必ずと言っていいほど第一印象は否定から入るようなヒロインはどうかと思う。特段の理由もなしに世の中をナメきっているし、「こいつ自分のことしか考えてないだろ!」とツッコミたくなるような思考が透けて見える、一言で言うと根暗が染みついた野比のび太みたいなキャラクター(女子高生なのに…)なのだが、周りのキャラクターが優しく有能な聖人ぞろいなのでそういうツッコミは視聴者が持つメタな文脈に回収されていく。そして相方のひなたのほうもそんなあおいを溺愛している*3から手に負えない。
そんな毒を飲み込んだうえで「かわいい」を実現する絶妙なキャラクター造型も、私のような性格のひねくれたオタクの心に訴えかける理由の一つだろう。一期の序盤では内気で女の子らしい面が強調されているあおいだが、少しずつひなたと打ち解けていくにしたがってしだいにその本性を現し、ひなたに対してだけたいそう横柄になっていく*4その様子を、ぜひあなたの目で見届けてほしい。
ヤマノススメって結局どんなアニメ
"趣味系"アニメの一つとして捉えられがちなヤマノススメだが、むしろゆったりとした雰囲気の中で活き活きと動くキャラクターたちの息遣いを描くことに主眼を置いているという点で「のんのんびより」に通じるところがあるかもしれない。
いわゆる日常系とも趣を異にするところがある。登山をきっかけに美少女同士が出会い、ワイワイ会話を繰り広げることで始まった物語だが、話数を重ねるにしたがって視聴者はいつしか「思い出の山に登る」「富士山に登る」というゆるやかな目標がシリーズ全体に横たわっていることに気づく。ヤマノススメに流れる時間は決して無限に引き伸ばされた日常ではなく、確実に、少しずつ前へ進んでいく。アニメ版ヤマノススメはあおいとひなたがいさかいと和解を反復しながらも日々の「おもいで」を積み重ね、それを再確認していく物語でもある。
どこを切り取っても顔が良い女が二名 pic.twitter.com/4FEXM0F8P3
— モチ心(こころ) (@omochitecture) 2017年1月5日
ヤマノススメを見よう
最後に、ここまで読んでヤマノススメを見ることになったあなたのために便利な情報を記しておこう。今から過去のシリーズを含めてヤマノススメを見るなら、各種ネット配信サイトが発達しているのでそちらを利用するのが便利だと思う。dアニメストアは月額400円程度の課金で1-3期に加えてOVAまで見放題の太っ腹仕様でおすすめ(1ヶ月の無料期間あり)。
1期は古き良き5分アニメ枠で制作されていて、CM等を除いた実質視聴時間は3分30秒なので全12話を見ても所要時間は45分程度。どうしても時間がないという人はとにかくこれを見ればヤマノススメの基本的な世界観は理解できる。
一方セカンドシーズンは15分枠で制作されていて全24話。だいたい30分アニメ1クール分なので、これを一気に見るのは気後れする人もいる*5と思う。そこで以下におすすめの回のリストを載せておくので、拾い見するなら参考にしてほしい。ヤマノススメのストーリーは数話が続き物になっていることはあるものの、全体としてはゆるく進行していくので、必ずしも順番にすべての回を見なければならないということはないので安心してほしい。
#2 富士山を見に行こう!! 〜 #4 降りた後のお楽しみ!
15分に枠を拡大して本格的に登山を描けるようになった最初の回。勢揃いしたメインキャラ4人と、賑やかな登山の雰囲気を楽しめる。4話は妙に印象に残る、貴重な温泉回。
#5 ゆるして、あげない!
ガチ喧嘩回。あおひなは小学生みたいな喧嘩から始まり小学生みたいな喧嘩に終わるというのはヤマノススメ教科書の最初のページに書いてある。些細なきっかけによるすれ違い、本当は仲直りしたい気持ち、心情の動きを丁寧に描き15分でまとめる構成が白眉。
#9 初めまして、富士山 〜 #11 もぉ、やだ!!
富士登山。ロケーションにも力を入れたらしい、気合いの入った背景や文化風俗描写など、3話かけて富士登山の雰囲気をたっぷり味わえる。ストーリーとしては、あおいだけは高山病で踏破を断念してしまうのだが、そこで富士登山へのリベンジがサードシーズン以降のテーマになってくる。あおいを残して山頂へ向かうひなたらの拝む御来光は圧巻の一言に尽きる。
#12 Dear My Friend
一番好きな回。富士登山に挫折してスランプに陥り、一人で思い悩むあおいがひなたの存在に救われて自分を取り戻すまでを、静かにカメラで追いかけた短編映画のような回。物語の出発点だった天覧山をふたたび訪れ、開けた空と木漏れ日の下でひなたに導かれて笑顔を思い出していくあおいが美しく、シリーズ全体でのあおいとひなたの関係を暗示している。一度見ても美しいが、シリーズ全体を見終えたあとにもう一度見て感慨深いのはたぶんこの回。
#13 不思議なホタルの物語
問題作。回ごとに作画にクセのあるヤマノススメの中でも突出して表情の強い作画。10年の時間を隔てて語られる、ミステリー風味に彩られた夏の夜の思い出。シンプルだけどしなやかな浴衣の着こなしはアニメ界の至宝だと思う。
#17 高いところって、平気?
これは山があまり関係なくて女子高+中学生4人が地元の公園で遊ぶだけの話なんだけど、すさまじいロケーション力、背景力、そして動画力で殴ってくるすごい回。アスレチックがたくさんある公園ってどこの地元にもあって、子供のころ遊んだ思い出のある人も多いはずだが、そういうプリミティブな楽しさを思い出させてくれる。
#20 ここなの飯能大冒険
ヤマノススメの影の立役者ここな*6が大活躍。非現実的にバカデカい家に住んでいるあおいとひなたに対してなぜか明らかに昭和築のアパートで暮らしているここな。仕事で忙しい母と一緒に過ごすことはできないが、飯能市に抱かれて特別な一日を夢と幸せの中で過ごす。あおいとひなたの物語の裏でここな家の物語も確かに存在している。
#21 思い出の山へ 〜 #23 約束
いよいよ思い出の山、谷川岳に登る。クライマックス。説明不要。見てください。
結論
ヤマノススメ、最高〜〜〜〜〜!!!!